国際問題

路地を歩いている最中にメンバーの一人が言った

「なんかディズニーランドみたい」

なるほどなと思った
コンニチハコンニチハうるさい客引きも
ところかまわず地べたで寝るおっさんたちも
馬鹿でかい音でクラクションを鳴らしながら走る車もどこか非現実的だ

でも現実に人はそこで暮らしていて、それが彼らにとっての普通なんだと思う
その普通が僕たちにはディズニーランドのように映る
現実味がなくて夢のようだと
だからくつを履いていない子供を見て、手足のない物乞いを見て、

「大変だ」   「助けなきゃ」   「国際問題だ!」 と叫ぶ

確かに彼らの現状は仮にそれが彼らの普通だったとしても深刻だ
食べるものも満足に食べられず生きるために生きていくような生活なんて誰にも送ってほしくない

でも「貧困」という彼らの抱える問題の本質は彼ら自身にあるのだろうか

言い方を変えよう

彼らの生活と僕たちの生活には何の関係もないだろうか

彼らの、僕たちの生活を生活たらしめているのはこの社会の構造そのものではないだろうか
僕たち自身が望んで消費と発展を無限に求める社会のシステムをつくりあげてきたはずだ
そのシステムが地球のどこまでも食い尽くすような消費を生むと気づいていながら
そしてその上で「より良い社会を作ろう」とスローガンを掲げてきた
世界を蝕む消費を続けながら共存を叫んできた

今すぐ財産を放り出して原始に戻ろうと言っているわけじゃない
苦しむ人々を助けることに文句を言っているわけでもない

僕たちにできる一番最初の、一番簡単なことは「考える」ことじゃないだろうか
発展とは何か、なぜ社会は消費し続けるのか、、
どうすれば僕たちの心は満足するか、どうすれば彼らが満足するか

答えが出るかはわからない
というか出ないと思う
すべての人が幸せであるようにという傲慢で支離滅裂な願いがその根底にあるからだ

それでも僕はすべての人が幸せでいてくれたらなと思う
そうすればこんな面倒なことを考えなくてすむし好きなことをして暮らしていける

インドに行ってそんなことを思った

2012.10.12

【文責 田中 昴】