Fika

熱々のコーヒーを一口飲み、あのなんともいえない幸福感を僕は感じていた。

ここはスウェーデンのウプサラという町にあるカフェ。コーヒー好きの僕がここに来たのは正しかったかもしれない。コーヒーの匂い漂う店内、西洋風の派手な色合いの家具、壁には絵の具を無造作に塗りたくったような水彩画が飾られている。そんな店内でコーヒーを飲みながらたくさんの人たちが談笑し、笑い合っている。平日の昼間からこんなにも多くの人たちで賑わうカフェのどこか温かみを感じる。

スウェーデンでは、コーヒーを飲む人たちをよく見かける。テラス席で話し込む夫婦。公園のベンチで座っている若者。その傍らにはいつも一杯のコーヒーがある。この光景はスウェーデンの伝統的な文化、フィーカが関係しているようだ。フィーカでは知り合いや友人と一緒にコーヒーと焼き菓子を楽しむ文化。スウェーデンではよく行われ、さまざまな人種、言語、民族関係なく楽しむ文化として親しまれている。というようなことをなんかの本で読んだことをそのとき思い出した。

店内は多種多様な人たちで賑わい、まるで世界中の人たちを集めてお茶会をしているようだ。いくつもの人種や宗教などを受け入れるスウェーデンにとって、フィーカは幸せを作り出す一つの要因なのかも知れない。そう思いながら、おもむろに隣の友人に視線を移す。

「そういえばさ・・・」

いつもは耐えられない照れくささが、コーヒーの匂いが立ち込める温かい雰囲気に隠れ、普段はなかなか話そうとは思えない話をついついしたくなる。話を夢中でしていたら気づけば外は夕暮れが一日の終わりを告げていた。しかし今夜の話は一向に終わらなさそうだ。

 

コーヒーの匂いを纏った空気を吸い込んでみる。そしてゆっくりと吐いていく。

自分がただのコーヒー好きからフィーカ好きに変わるのをジワジワと感じた。

【文責 9期 井上佳暁】

コメントを残す