ツクロワナイ

外国に行って何日かたつと、その国のルールというか、
なんとなく暗黙のうちに共有されている「生きるわざ」のようなものが見えてくる。

中国のそれは「つくろわない」ということ。

ニコリともしないタクシー運転手。
ちゃっかり自分も食事をしながら接客する飯屋の店員。
周りの目も気にせず列に横入りしてくる男。
満員電車のなかスマホで音楽を流し、幼い娘に歌わせている母親。

どれも日本で見たら顔をしかめてしまうような光景ばかりだ。
しかし中国にいると不思議となんとも思わない。
周りでそれらの光景を見ている人もまったく気にしていない様子だ。

人ってそんなもんじゃん、気ままが一番!ワガママバンザイ!と、
その寛容とも無関心ともいえる環境に、私も思いっきり甘える。

屋台の先頭に分け入り写真を撮り、しつこい商売人には遠慮なく顔をしかめる。
沈黙をうめるための会話をやめ、気まずさを和らげるためのつくり笑顔をやめる。

無意識に自分をつくろっていた鱗が、ゆっくりと、はがれる。

自由とはかけ離れた印象の国で、私は自分をつくろうことをやめ、
こんなにも自由で、素直だ。

和式ばかりのトイレに、急に冷水が飛び出すシャワー。
空が灰色に霞む日も少なくない。

決して住みやすいとはいえないけれど、中国は、生きやすい国だ。

【文責:8期 小嶋熙】

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