旅の前日 ウイグルに行くとき

あしたから旅がはじまる。
ワクワクしながら、ただちょっとめんどくせーなと思いながら、
でもやっぱりあしたのことを考えると荷造りをする手が早まってしまう。
こどもが遠足に行くときみたいな感じがする。

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世界地図をながめているとき、「新疆ウイグル自治区」という名前をちらっとだけでも見たことがあるかもしれない。
中国の西のほうに広大な面積をもつ土地で、西遊記の舞台ともなっているシルクロードの砂漠がある。

そのウイグルで、ある不可解で奇妙な事態が起きている。

ある村では、母親が産んだ赤ん坊の8割が体に異変をもって生まれてくる。
ある村では、内蔵に急病が発生し、ガンを持つ者がたくさんでてくる。
ある村では、歩けず話せない障害児ばかりが生まれた。

その異変が起きたときは、その村々の人たちはなにが原因なのかもわからず、ただそれに苦しむことしかできず、最近までその原因を知らなかった。

中国政府が、ウイグルを核実験の試験場にしていたのだ。
1回だけではなく、60回以上も。

拡散された放射能は、福島の原発から漏れた放射能の何十倍もあり、
大多数のウイグル民族が被爆者となり、地獄のような、つらい苦しみをカラダに持った。

実は核実験だけじゃない。

中国政府はウイグル民族に対して徹底的な民族浄化を行う。
ウイグル民族が増えないように「ふたりっこ政策」
電話、ネットのやりとりはすべて監視。
中国政府に逆らうウイグル民族は
逮捕、拷問、死刑。

常にしばられた日常がウイグル人達を追いつめる。

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ウイグルのことを学ぶとき、「ウイグルがかわいそうなことになっている」というところまでは自分でもわかるのだけど、あまりにも自分には考えられないような世界が、とても遠く感じた。

ただ、とある日本にいるウイグル人の方に話を聞くと、
その人の胸にたまった思いが、目を背けたくなるほど強く伝わってきた。

その人の、怒りと不安とどことなくあきらめた感情が入り交じった顔に、
失礼ではあるけれど、なんだか好奇心を持った自分がいた。
こわい物見たさの好奇心なのか、あるいはあの人と同じ空気を吸ってみたいという好奇心なのかはわからない。

でも、この人たちの怒りと不安とあきらめを、自分の目で見なきゃ、という思いは大きくなったことは確信している。

そしてやっと、あしたから旅が始まる
遠くにはない、でも知らない世界に
自分の目で見ることの出来る好奇心と、ワクワクをつれて。

※「新疆」は「しんきょう」と読む。
 意味は「新しい土地。新しい征服地。」

2013.03.05

【文責 川西慶佑】