Dream

目を閉じて腕を広げる。刺さるように強烈な空からの熱さと砂の混じった風が私を包み込む。レンガと土で作られている崩れかけた家々、まばらな草木と2、3頭の犬。見たところ店もなく電気の通っている気配はない。そこに暮らす人々がいた。

私たちが宿泊していたパブキダニから車で約50分、砂漠にある村を訪れた。車を走らせている間、驚くほどに何もなかった。というのも50分間村らしきものどころかまともな家すら見なかったのだ。車の窓から見える景色は絵にすると簡単に描けそうで、黄色っぽい茶色と少しの緑と透き通った青で出来ていた。

村では実際の生活を見学するために幾つかの家を回った。行く先々で出会う子供。破れて穴が開いた汚い服を着た子供達は東京で見る子供より何倍も輝いて笑っていた。彼らはいつもまっすぐに私を見つめる。目の前にあるものだけを見て、感じて、表現するように。笑いかけると恥ずかしそうにくしゃっと笑い返すのだ。笑顔の会話に言語は必要ない。会話は時に一方通行で、時に工事中だけど。

そんなことを考えていると私の手に誰かが触れた。ヤムナの手だった。ヤムナはパブキダニを運営している方の子供で10歳の女の子だ。パッチリとした目に長いまつげ、少しカールしたショートカットは日に焼けて茶色がかり、肌は黒い。可愛らしい顔立ちだ。英語を少し話すことができるヤムナは私に頻繁に話しかけてくれる。

「調子は大丈夫?」
「見て!あれすごいわ!」

嘘にまみれた暗闇の社会を知る私にとって彼女の言葉は真っ白で眩しくさえ感じた。私はふと、彼女に聞いてみたくなった。

「あなたの夢は何?」

幸せそうな笑みは消え真剣な表情になる。わたしを見つめていた目線は遠くの地平線へと移り変わった。心なしか手を握る力が強くなる。彼女は微笑んだ。喜びでもなく楽しさでもない、どこか悲しげな色をのせて。

「見て。あそこの犬、黒いわ。」

私たちにとって「夢」ってなんだろう。「夢は誰でも平等に持てるものだ」ってどこかの正義をうたった絵本の言葉を思い出す。インドはカースト制の強く残る国。自分の将来は生まれた時から決まってる。もちろん職業も。彼女のあの強い力を持つ目は自分の未来に何を見ているのだろう。
ヤムナが私の手を強く引く。汗と砂が混じり合う居心地の悪さに乾いた風が吹く。後ろから子供達の楽しげな笑い声が聞こえる。日はもうすぐ暮れそうだ。私はまた歩き始めた。

【文責:9期 岡部真奈】

 

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