素敵な笑顔

長いフライトを終えてようやくインドの地に降り立った。

青空のもとで奇妙な生ぬるい風が身を包み込む。そう、私はいまタミルナードゥ州のマドゥライにいる。この地には観光客はほとんどいない。そのためか現地の人々の生活が広がっている。活発に街を行き交う中年の男性達、汚れた服を身につけならがら弱々しく歩く老人、狭い道を猛スピードですれ違う車、当たり前のように路上にいる牛、至る所で鳴り響くクラクション音、放置されたゴミから放たれる独特な臭い。

こうした街並みに対して私は嫌悪感を覚えた。日本に帰りたい…。これがインドという国を訪れた際の正直な感想である。あまりにも日本と異なる光景に怖気付いてしまった。そんなことを思いながらも市街地から1時間ほど離れた村を訪れる。広大な土地にポツリポツリと家々が建つ小さな村だ。

そこにはたくさんの子供がいた。彼らは異国の地からやって来た、カメラをぶら下げている私を恐る恐る見つめる。興味はあるが恥ずかしいようだ。

そのうち写真を撮って、と近づいて来る。私はタミル語は分からないので、彼らはジェスチャーを使って必死に伝えようと試みる。私は彼らの元気で嬉しそうな姿に対して夢中でシャッターを切る。ここで面白いのは、カメラを向けると決まって真顔をすることである。真顔で写ることが最も良い写真になると思っているのだろうか。不思議である。そんなこんなで撮った写真を見せるとお互いに笑顔が溢れた。カメラを通して遊んでいると時計の針はあっという間に進んだ。気がつくと19時であった。

夕食の時間になり彼らと共に食事をした。バナナの葉をお皿にし、その上にご飯とスパイスの効いた数種類のカレーをよそう。彼らがするようにスプーンを使わず右手だけを使って食べると、とても嬉しそうである。私は子供達の元気で無邪気な姿に惹きつけられていた。仲を深めるのには言葉なんて必要ないのかもしれない。ふと、そんなことを思った。

私はこれまでインドという大きな国を何も知らずに一括りにして考えていた。汚い、臭い、治安が悪い…。これがインドだと思っていた。

しかし、それは完全に間違いであった。壮大な自然と共存する居心地の良い村と、何よりも笑顔が素敵な可愛い子供達がいる。インドの新しい一面を見ることができた。

そこまで生活するのに悪くない場所もあるではないか。本当はもっともっと魅力の詰まった国なのではないか。そう思えるようになると心が軽くなった。この国に来てから見ず知らずのうちに感じていた緊張から解放された。

こうして楽しい時間を過ごしていると、次なる目的地へ向かうためにこの村を後にしなければならない日がきた。最初の頃に見た光景は最早当たり前のものになっていた。

インドの生活に一歩近づくことが出来たのかもしれない。空港に到着すると吹いている風は心地よいものになっていた。

【文責:9期 柳沼祐亮】

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